姫路歩兵第十連隊の足跡

復刻出版にあたって

 かねてより手掛けておりました「姫路歩兵第十連隊の足跡-軍都姫路の形成-」の復刻出版をすることができました。
 私は、昭和23年生まれの団塊の世代で、戦争を知らない子供たちとして、平和の時代を享受させていただき、いよいよ終活の時を迎えています。
 約2年前、叔父の遺品整理の中で、「姫路歩十会 軍事記録」なる、カタカナ表記の文語体の難解な古びた和本を発見し、その後、いろんな出会いにも恵まれ、こうして復刻出版という、充実した「終活」の課題を遂げることができました。そのいきさつについては本文に目をとおしていただければ、ありがたいです。
 私にとっては、郷土史、家族史の復刻と言えるものになっています。この出版に携わる中で、ほんの80年から150年ほど前の父や祖父の時代のことを、私はあまりにも知らなすぎることを痛感しております。世界遺産姫路城は、かつては「軍都姫路」の拠点であったことを初めて知ることとなりました。
 本の表紙は、口絵にもある明治17年頃の姫路城の三の丸広場での「歩兵第十連隊」の練兵風景をデザインして使われています。
 明治7年の徴兵制の実施により、20歳になれば男子は2年間の徴兵の義務が課せられ、姫路城周辺には各地から多くの若者たちが集まりました。彼らはこの地でどのような青春を謳歌したのでしょうか。貧しい山間部に暮らす私たちの先祖は「百姓徴兵」として軍人の道に身をゆだねる選択しかなかったのだと思われます。「百姓あがり」と蔑まれ、多大な被害を出しながらも、それでも屈強な薩摩武士を圧倒していった郷土の先祖たち。どんな思いで、それぞれの時代を生き抜いてきたのかと、改めて襟を正し、その足跡を偲ぶところです。

発行者:中谷康夫

 

 

 

著 者:藤原龍雄
発行者:中谷康夫
発行所:播磨歴史ネットの会
定 価:本体1800円

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原本写真の解読(文語体)

 本連隊の歴史従来の体裁簡略に失し、閲覧の実況を知悉するに常に隔靴掻痒の憾なきこと能わざりき、以て為(おもえ)らく此の如くして多く年所を経るには及ばば、創立以降二十有余年間事蹟或いは其の真を考うること能わざるに至らんと、茲(ここ)に於いて連隊歴史補修訂正の事を企画し、明治三十四年十二月歩兵大尉奥田為熊に属するに此の事を以てせり、大尉事に当たりて奮励し拮居(きっきょ)経営或いは隊中の故書推裏に就き之が資料たるべきものを捃摭(くんしょ)し、或いは曽(かつ)て本連隊に在職せし将校諸氏に檄を移して当時の事実を諮詢(しじゅん)し、或いは親を大阪・和歌山・明石等に千攸せる諸氏を歴訪して其の実歴談を聴取し有益なる数多(あまた)の材料を蒐集(しゅうしゅう)し以て之が編纂に勤め、遂に瞭然として復(ま)た遺憾なきに至れり、是大尉辛勤励精、功与(あずか)りて力ありと謂わざる可(べか)らず、嗣後(しご)本連隊の将卒、此の書に拠りて以て創立以来の経歴を詳悉(しょうしつ)せば、教育上至大の便利を得んこと知るべき也。

明治三十五年五月下澣(げかん)

歩兵第十連隊長 小野寺 実

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